【連載】泣きのギター研究会(11) ジミー・ペイジ
研究員1号:みなさんコンニチハー。寒い日が続きますね。
研究員2号:ホント寒いですー。でも今日も元気に泣きのギター行きます!
1号:えー、今回は、おそらく日本よりはもっと寒いであろうイギリスのアーティストです。
2号:大御所です。
1号:しかしながら……
2号:??
1号:執筆者細川氏は、日本の文豪たちとの共通点を見出しています(笑)
2号:どうぞお楽しみください~!
(文:細川真平)
“泣きのギター”曲には邦題がよく似合う。
まるで富士と月見草との関係のように。
いや、ウソです。
テキトーに思いつきで言ってみました。
すみません、太宰はん。
でもですね、確かに“泣きのギター”曲にはいい邦題がついたものが多いんですよ。
「哀愁のヨーロッパ」でしょ。
「パリの散歩道」でしょ。
…………。
ふたつだけかいっ!
いえ、まさか。
決定的な邦題があります。
「貴方を愛しつづけて」レッド・ツェッペリン。
……でも、これほぼ直訳じゃん。
甘い。
「貴方」とするか、「あなた」と平仮名にするか、「貴女」とするか、そして「つづけて」を漢字にするか平仮名にするか。それらによって雰囲気はガラリと変わります。これは、そういう細かい部分にまで目が行き届いた、素晴らしい邦題なのです。
あのさ、今は「貴方」だけど、国内初回盤LPの帯を見ると、「貴女」ってなってたの知ってる……?
ちゃん、ちゃん。
お後がよろしいようで。
■「貴方を愛しつづけて」収録CD

レッド・ツェッペリン
『レッド・ツェッペリンIII』
そうじゃなくて。まだ終わりませんから。
とにかくですね、“泣きのギター”3大名邦題が、「哀愁のヨーロッパ」「パリの散歩道」「貴方を愛しつづけて」だと、私は思うのです。
ほらもう、どこか演歌的なニオイがあって、タイトルからしてすでに“泣き”の気配がするじゃないですか。
「哀愁のヨーロッパ」は、原題に“哀愁の”と加えただけですが、ここにはコペルニクス的転回を感じます。まさにカントが言うように、「人間の認識が外部にある対象を受け入れるのではなく、人間の認識が対象を構成する」わけですね。オッホッホッホッ(変酋長かよ)。
「パリの散歩道」は“散歩道”だからいいんです。「パリの遊歩道」だったら泣けません。ただ、残念なのは、ここはパリを漢字で、「巴里の散歩道」としてもよかったかな、と。これはやりすぎでしょうか?
さて、この3曲には共通点があります。
どれも短調(マイナー)だということです。
“泣きのギター”曲=マイナー、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。たとえば、この特集では範囲が広がりすぎるために除外されているブルースには、長調(メジャー)の曲が圧倒的に多いですね。ギターは泣いているのに。
つまり、メジャー・キーなのに、どこかマイナーの薫りがする……それはブルー・ノートが使われているからであり、その雰囲気をブルージーと呼ぶのだと思います。
ま、はっきり言うと、マイナー・キーでギターを泣かせると、ベタベタになる可能性大なんです(笑)。ちょっと間違うとやりすぎになったり、品がなくなったりという危険性をはらんでいます。
「パリの散歩道」はそうとうギリギリです。いや、“セクスィー部長”のテーマとして使われたということは、ひょっとしたらNHK的には、あれはギリギリの範囲を超えている、という判断だったのかもしれません。
そういう意味では、マイナーでありながら、ベタベタ感・品ナシ感を適度に抑えつつ、“泣き”との見事なバランスを取っているのが、「貴方を愛しつづけて」なのです。
ジミー・ペイジは、基本的にはCマイナー・ペンタトニックを使っているのですが(キー=Cm)、そこにDとG#というペンタ・スケール外の音をうまく交ぜてフレーズを紡ぎ出しています。これが素晴らしく効果的なのです。
泣いている合間に、頬にこぼれた涙をふと振り払う仕草に似ている、とでも言いましょうか。
↑ ここでは、自分の愛する人のそんな仕草を思い浮かべてみてください。
ずばり“泣き”の部分で言うと、4分9秒あたりからの1音半チョーキングにつきます。これはもう、“泣く子と地頭には勝てぬ”感が横溢する“泣き”であります。女性がその魅力と魔力とずるがしこさを最大限に発揮し、身をよじって泣いている(もしくは泣きまねをしている)かのような……。
こんな“泣き”にだまされてしまうと、最終的には「われ泣きぬれて蟹とたはむる」なんてことになりかねません。
諸兄におかれましては、くれぐれもご注意のほどをお願い申し上げます。
あれ、何の話でしたっけ?
[細川真平]
【関連記事】
[ジミー・ペイジのレス・ポールと『レッド・ツェッペリンII』] 2008年3月28日
[ジミー・ペイジ来日記者会見レポート] 2008年01月29日
[ライブ・レポート レッド・ツェッペリン London O2 Arena] 2007年12月27日
【著者プロフィール】
細川 真平(ほそかわ しんぺい)
音楽ライター。
ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。
『ギター・マガジン』では「ロック・レジェンド紳士録」を、当サイトでは「GENTLY WEEPS - ギターとアルバムを巡る物語」を連載中。
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ロック・ギタリストのための“歌う”ソロ・トレーニング
著者:森山 直洋
A4変型判/104ページ/CD付き
1,680円(本体1,600円+税)
2008年12月19日発売
- [2009年01月13日 17:02]














