ライブレポート/ウリ・ジョン・ロート by ルーク篁
ウリ・ジョン・ロート
2008年11月11日 中野サンプラザ
待望の来日。この言葉が最も似合う人物のひとり、ウリ・ジョン・ロート。
孤高の天才は己の道を突き進むあまり、周囲の理解を省みない。ひたすらに自分の感性に従い、妥協を許さない。リリースは締切に間に合わすのではなく完成の声を待ち、ライブも事前の決め事に100%頼らない。スポンティニアスな要素を含め、すべてを把握しコントロールする様は、マエストロの風格さえ漂う。
さぁ、今夜はどんな音が聴けるのだろうか。
ウリ側、前から12列目に陣取った僕は、緊張が隠せない。
中野サンプラザと言えば、スコーピオンズの初来日を目撃した場所だ。ストレートの長髪を靡かせ、胸に構えたストラトキャスターを不動で弾きまくる。三点倒立をしたルドルフ・シェンカーにギターを擦り付け、ルドルフのベルトを切ってしまった(はずれただけか?)、あのパフォーマンスは最早伝説だ。
前回の来日ももちろん観たが、またここでウリを観ることができるとは、なんという巡り合わせだろう。期待で胸の中が痒い(笑)。ここからはファン目線で(笑)。
マーシャル1959を基本に、別のアンプも混ぜていたようだが、そのギター・サウンドはなんとも太くナチュラルであまりに生々しい。久しく聴いていなかったロック創成期の音だ。
低音が多少ブーミー気味だったが、その分高音の太さと伸びは素晴らしい! 多少荒れてるくらいのほうが、音と格闘しているように聴こえてエキサイティングだ!
そして、ウリの音がデカい(笑)。2日目(11月12日)は上手寄りで観たのだが、歌もサポート・ギタリスト(ニクラス・ターマン)の音も聴こえたので、アンプの出音がデカいようだ。しかし、バランスが悪くてもウリの音をはっきり聴きたいと思ってしまうのは、邪道だが正しい(笑)。
「スカイ序曲」でスタートしたショーは、まさに新旧取り混ぜた曲たちが並ぶ、実にサービス精神に溢れたものだった。これは、うれしい誤算。期待をはるかに上回るスコーピオン率!
「カロンの渡し守」のイントロのソロは、何度聴いても凄い。あれを70年代に考えつくなんて、信じられない。誰もあんなことやってなかったもの。しかも、コピーしてみると、運指が思ったより合理的にできてる。発明だよ、あれは……。
詳細はセットリストに譲るが、今回の目玉は、「サン・イン・マイ・ハンド」か「人生は川の如し」か「キャッチ・ユア・トレイン」か。それともリクエストが多かったと紹介された「ファイヤー・ウインド」か。
いや、個人的には「フライ・トゥ・ザ・レインボウ」のエンディングのフィードバック・ソロだな。あんな音、今や誰も出せない。ギターによる極上の悲鳴は、完全にコントロールされていて、まるで赤ん坊をあやすかのようだった。
優しさと激しさ。悲しみと喜び。一瞬と永遠。大袈裟に感じすぎてるのかな……。でもいいや、とにかくカッコよかったんだから(笑)。しかし、泣いてるギターはたくさんあるけど、フレーズに感動して涙が出るツイン・リードは、この曲くらいだな……。
アンコールでは、マーティ・フリードマンの登場で“動”の部分が加わり、「イン・トランス」ではまさにトランス(笑)。歌のバックでオブリをユニゾンやハモりでウリと顔を見合わせながら弾くマーティがうらやましかったなぁ。神と崇める人を前に、堂々と自分のフレーズをキメていくマーティ。本当にカッコよかった!
今回、ウリの音に触れて、あらためて独自性を貫くことの大切さを痛感した。
必要とあらば、7弦でバイオリンの音域をカバーするようなギターを作り、ピックアップやアンプを開発し、独学でピアノをマスターし、大胆にオーケストラを導入する。
「カロンの渡し守」以降、エレクトリック・サンでのギター・フレーズの革命的な変化、いや、進化してしまう前向きな姿勢と情熱。まったく頭が上がらない。
“ロック・アルバムを作れ”と言われて納得してスタートしたはずなのに、“リンゴの木にはリンゴしかならない”と言って、『アンダー・ア・ダーク・スカイ』のようなアルバムをリリースしてしまうあたり、相当な強者であることは間違いないが(笑)、見習うべきところは多々ある。
周囲の評価やバッシングが怖くて初めの一歩が踏み出せないでいる人も多い世の中だ。世知辛い。自分も音楽で表現をする道を選んだ身。世間に媚びることなく自分を曝け出すのは怖い。
しかし、僕はとりあえず、ギターともう一度きちんと向き合うことにした。自分の内なる声に耳を澄まし、それに従う。雑音に惑わされない。
それで何も変わらなくてもいい。向き合ったという事実が自分の中に残れば、きっとそれは、自分が一番褒めてもらいたい人物、“自分”が与えてくれる最高の勲章になるだろうから。
文:ルーク篁(CANTA/元・聖飢魔II)
【SET LIST】
1.Sky Overture
2.Land Of Dawn
3.The Magic Word
4.Letter Of The Law
5.Tanz In Die Dammerung
6.Keybord〜Drums〜Bass Solo
7.Hiroshima〜Enola Gay
8.We'll Burn The Sky
9.Sails Of Charon
10.Polar Nights (Changes to Emperor E-flat)
11.Pictured Life
12.Catch Your Train
13.I've Got To Be Free
14.Virgin Killer (Short Version/Improvise)
15.or Fire Wind
16.Starlight (with Marty Friedman)
17.Life's Like A River (Short Version)
18.In Trance (With Marty Friedman)
19.All Along The Watchtower
20.If Six Was Nine
21.Atlantis
- [2008年12月03日 17:47]











