ライブレポート/ROCK LEGENDS“PEARL”
ROCK LEGENDS“PEARL”--2008年10月4日・中野サンプラザ
天才ロック・シンガーの名をほしいままにしながら、27歳の若さで亡くなったジャニス・ジョプリン。あの衝撃の死から28年目の命日に、ジャニスをトリビュートするスペシャル・イベントが行なわれた。
出演は、若き日に下北沢のジャニスの異名をとり、先頃スモーキー・メディスンの復活でも話題を振り撒いた金子マリ、そして近年は女優&ロック・シンガーとしても活躍がめざましい夏木マリ。ジャニスに影響を受けた大人の女性ふたりがそれぞれのバンドで、愛情タップリに歌い上げるという趣向だ。
金子のバンドはこの日のために編成されたCOUNTER MOON。ギターに森園勝敏を据えて、鳴瀬喜博(b)、岡井大二(d)、佐藤準(k)という布陣である。お気づきの方も多いだろう。そう、スモーキー・メディスンと四人囃子のメンバーの混合体なのだ。
夏木のほうは、近年コンスタントにライブ活動を行なっているGIBIER du MARI。ギターはichiro、そして高橋“jr ”知治(b)、樋口晶之(d)、斎藤ノブ(perc)、久米大作(k)というベテランばかりのメンバーだ。期待が高まる。
コンサートは、おなじみジミヘンのトリビュート・バンド、Band Of Shigeo Rolloverのオープニング・アクトで幕を開けた。
言うまでもなくジミヘンとジャニスは60年代後半のサマー・オブ・ラヴやウッドストックを象徴する同時代のアーティストである。サイケデリックなパフォーマンスで、会場をあの時代へとタイムスリップさせた。
「パープル・ヘイズ」「ヘイ・ジョー」、そして「マニック・ディプレッション」と次第にテンションを上げていく。マーシャルから放たれる轟音が心地よかった。
フィードバック・ノイズを残してバンドがステージを去り、いよいよCOUNTER MOONの出番となった。
静かな登場。バンドが位置に着く。そして始まる金子マリのシャウト。そのはじけっぷりが潔かった。
森園は珍しくレス・ポールをぶら下げ、分厚い音でリズムを刻んでいる。
意外なことにサックスとトランペットをサポートで加えていたが、これが抜群の効果を生んでいた。要所要所で覆いかぶさってくるブラスのしらべがあの時代のグルーヴを演出していた。
「ハーフ・ムーン」、「愛は生きているうちに」と金子の歌唱もノッてくる。
そして、ジャニスが急逝したため歌を録音されることのなかった「生きながらブルースに葬られて」では、森園のファズをかましたギター・リフが深い感動を誘った。続く「心のカケラ」ではまさに燻し銀のプレイを森園が聴かせ、バンドのコーラスもピタリと決まって、ベテラン・ミュージシャンの底力を見せつけた。
こうして聴いていると、ジャニス・ジョプリンというアーティストの奥深さというものをまざまざと感じさせられる。そこにあるのは紛れもなくジャニスの音楽なのである。最高の音楽は最高のミュージシャンの手によって演奏された時に、たとえ本人が不在であっても、そこにくっきりと形をとって現われる。ここに集った人たちは、その種の強烈な体験をしたのだった。
バンドはラストの「コズミック・ブルース」まで一瞬たりとも気を抜かない演奏で、ベテランの面目を躍如した。マイクから離れて「メルセデス・ベンツ」を大声を張り上げて歌いながら退場していく金子の姿は初々しかった。
終演後、普段はストラトがメインの森園にレス・ポールを使ったわけを尋ねたら、“ジャニス(の音楽)はレス・ポールじゃないと負けちゃうんだ”と答えていた。ホーンの導入も森園のたっての希望だということで、なおさらこのステージに対する意気込みを感じたのだった。
そしてもうひとりのマリが登場した。COUNTER MOONがほぼオリジナルに忠実に演奏したのに対して、こちらはおそらく夏木の意向であろうアレンジで、歌詞は日本語だった。
そのステージングは、役者らしく“舞台”という言葉が似合うもので、一度体内で消化したジャニスを演じているかのようだった。
「心のカケラ」「ジャニスの祈り」「コズミック・ブルース」……。人間が直面する悩み、愛憎、恋愛感情、さまざまな心のあり方を夏木流の解釈で歌い上げていく。ラテン系のアレンジで、斬新な解釈を提示した場面も多々あった。ichiroのブルージィなギターも冴えに冴えた。
ラストはガーシュウィンの名曲「サマータイム」。あのジャニスの熱唱が思い出されるが、夏木はまるで人生を指南するかのような示唆に富んだ歌詞で、“アネゴ”の貫禄を見せつけた。さすがである。
ここでCOUNTER MOONが合流してファンキーな「ハーフ・ムーン」を演奏。
28年目の命日、東京の片隅で行なわれたこのステージは、尊敬と哀悼に充ち満ちて、ふたりのマリがむき出しにした“心のカケラ”はジャニスの未完成のアルバムにも似た“パール”の輝きを放っていた。
文:野口広之(ギター・マガジン編集長)
写真:吉浜弘之(テレビ朝日)
【SET LIST】
COUNTER MOON
1. メイビー
2. ハーフ・ムーン
3. トゥ・ラヴ・サムバディ
4. 愛は生きているうちに
5. 生きながらブルースに葬られて
6. 心のカケラ
7. タートル・ブルース
8. トライ
9. コズミック・ブルース
GIBIER du MARI
1. クライ・ベイビー
2. 心のカケラ
3. ジャニスの祈り
4. コズミック・ブルース
5. トライ
6. サマータイム
7. ハーフ・ムーン(with COUNTER MOON)
[金子マリ] 公式サイト
[夏木マリ] 公式サイト
[四人囃子] 公式サイト
[鳴瀬喜博] 公式サイト
[ichiro] 公式サイト
[高橋“jr ”知治] myspace
[樋口晶之] 公式サイト
[斎藤ノブ] 公式サイト
- [2008年10月22日 13:16]



