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雑誌で見た、塗装のはげたストラトの音

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【第39回】スティーヴィー・レイ・ヴォーンの“ナンバー・ワン”と『テキサス・フラッド』(3)

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『テキサス・フラッド~ブルースの洪水』(amazonリンク)
スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル

ソニー・ミュージックエンタテインメント
MHCP-636/1,785円
2005年4月6日発売(オリジナル1983年)



何ヵ月か待って、ぼくはSRV&ダブル・トラブルのデビュー・アルバム『テキサス・フラッド~ブルースの洪水』を手に入れた。

いま調べてみると、アメリカでこのアルバムが発売されたのは1983年の6月。

だがそのころはまだ、国内盤は海外より2ヵ月ほど遅れて発売されるのが普通だったので(地方に住んでいたので、輸入盤を買うという選択ははなからなかった)、ぼくがそのアルバムを入手したのは、きっと8月あたりだったのではないかと思う。


その内容はまさに邦題のとおり、“ブルースの洪水”だった。

MTV全盛期であり、耳にさわりのいいポップな音作りに彩られたヒット曲ばかりが世の中に溢れていた時代にあって(リッチー・ブラックモア率いるレインボーですらポップ・ロック化していたのだ)、それは驚きだったし、新鮮でもあった。


そして全編に渡ってストラトキャスターの音が鳴り響いていた。

ああこの音が、あの雑誌で見た、塗装のはげたストラトの音なんだな、と思った(そのときには「レニー」が“レニー”で奏でられているとは知らなかった)。

ディレイやコーラスやコンプレッサーや、その他さまざまなエフェクターで幾重にも厚着をしたギター・サウンドばかりを聴かされていた耳には、それは無防備なほどに素のままの音に聴こえた。

化学調味料で濃い味付けをされた柔らかい料理ばかり食べていたのに、いきなりそば粉だけで打った硬いそばを食べさせられたような気持ち、とでも言おうか。

正直言って、歯応えがありすぎたし、噛んでもなかなか味は染み出してこなかった。


FENの『キング・ビスケット・アワー』で聴いたときの音はもっと歪んでいたし、お馴染みのジミのナンバーということもあっていきなり夢中になったぼくだったが、このアルバムでのSRVのトーンに心底感動するようになるまでには、少し時間が必要だったように思う。


しかし、いま改めて聴くと、この音は本当に深い。

ストラトが持つトーンの本質と言うか、最も芯の部分を剥き出し、さらけ出させた音だ。シャープさと艶やかさが渾然一体となった、他のギターでは絶対に出しえない音だ。


そしてまた、大いに弾き手を選ぶ音でもある。

けっして、勝手にギターのほうで鳴ってくれる音ではない。

弾き手の熟練度と気持ちがあるレヴェルを超えたとき、それにギターが応えてくれて、やっと鳴る。

そういう音だ。

それが『テキサス・フラッド~ブルースの洪水』における、“ナンバー・ワン”の音だった。

SRVが弾くことによってこそ可能となり、この世に顕れ出る、“ナンバー・ワン”の音だった。


[続く]


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[スティーヴィー・レイ・ヴォーン - ソニー・ミュージックエンタテインメント]


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【著者プロフィール】

細川 真平(ほそかわ しんぺい)

音楽ライター。ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。『ギター・マガジン』では「ロック・レジェンド紳士録」を連載中。