コラム/セミナー > GENTLY WEEPS - ギターとアルバムを巡る物語
“こもって”いるのに“抜けて”くるクイーンのギター・サウンド
70年代の半ばごろ、“空耳アワー”という名称はなかったものの、英語の歌詞のここがこう聞こえる、というのはよく話題に上った。その中で、最も有名だったのがこれではないだろうか。
“がんばーれ、タブチ”
クイーンの「キラー・クイーン」の中の、"gunpowder, gelatine" がこう聞こえるのだ。一度そう聞こえてしまったら、もう二度と他の聞こえ方はしない。
そして当時は、誰しもが阪神タイガースの田淵幸一選手を思い出してしまったのだった(今回の北京オリンピックでは打撃コーチを務めている)。
いしいひさいちが、田淵を主人公にしたギャグ漫画『がんばれ!!タブチくん!!』を描いたのはそれよりも少しあとだったと思うが、ひょっとしたらそれはこの“空耳”から来たタイトルだったのではないかと、ぼくは憶測している。
しかし、74年に発表された「キラー・クイーン」をぼくが聴いたのは、リアル・タイムではなかったと思う。
初めてリアル・タイムで聴いたクイーンのナンバーは、75年のアルバム『オペラ座の夜』からシングル・カットされた、「ボヘミアン・ラプソディ」だった。
それ以降、クイーンの代表曲として常に名前が挙がるこの曲だが、最初に聴いたときには、1曲の中でのめまぐるしい展開ぶりに、面食らってしまった覚えがある。
しかし、聴くたびにそのドラマティックさに感動を覚えるようになり、またブライアン・メイの独特なギター・サウンドと、繰り出されるメロディー(彼の場合にはフレーズではなく、メロディーと言いたくなる)に、陶然とするようになっていったのだった。
独特なギター・サウンドと書いたが、それを具体的に言うと、“豊かに歪んでおり、こもっているのに強烈に抜けてくる”というのが近いのではないかと思う。
普通ならば、“こもっているのに強烈に抜けてくる”サウンドというのはありえない。なぜならば、“こもる”と“抜ける”は相反した概念だからだ。
しかし、メイのサウンドは、明らかに“こもって”いるのに“抜けて”くるのだ。だからこそ“独特”と言わざるを得ない、まさに唯一無二のものとなっている。
そのサウンドを生み出したのが、“レッド・スペシャル”と呼ばれる、メイの手作りのギターだった。
[続く]
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【著者プロフィール】
細川 真平(ほそかわ しんぺい)
音楽ライター。ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。『ギター・マガジン』では「ロック・レジェンド紳士録」を連載中。
- [2008年08月21日 15:40]









