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出会いは爆音の「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」

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【第37回】スティーヴィー・レイ・ヴォーンの“ナンバー・ワン”と『テキサス・フラッド』(1)

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『テキサス・フラッド~ブルースの洪水』(amazonリンク)
スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル

ソニー・ミュージックエンタテインメント
MHCP-636/1,785円
2005年4月6日発売(オリジナル1983年)



このコラムでは以前、スティーヴィー・レイ・ヴォーン(以下:SRV)のストラトキャスター、“レニー”を取り上げた。

今回は、彼が“ナンバー・ワン”、もしくは“ファースト・ワイフ”と呼んだストラトを取り上げたい。SRVを語る上で避けては通れない1本だ。

塗装の剥げまくったボディ、左利き用のトレモロ・ユニット、ピックガードに描かれたSRVの文字……あのギターにこそ、彼の魂が詰まっている気がする。


ぼくがあのギターの音を初めて聴いたのは、つまり、SRVの音楽自体を初めて聴いたのは、1983年の彼のメジャー・デビューよりも前のことだ。

1982年の前半あたりだっただろうか。日本ではかなり早くにSRVの音楽に出会った人間のひとりだと、誰に褒められるわけでもないのだが、ぼくは密かに自負している。


そのころ高校生だったぼくは、FMラジオを聴くのはもちろんのこと、AMラジオでFENをよく聴いていた。FENとはFar East Network(極東放送)、つまり在日米軍放送だ。

英語の勉強のため……ではなく、もちろん音楽を聴くためだ。

なかでも、土曜の夜に放送されていた『キング・ビスケット・フラワー・アワー』というライブ番組には熱中した。

これは、独自に収録した様々なアーティストのライブ音源をオン・エアする番組で、レコード化されていない演奏に触れることができたし、知らないアーティストに出会うこともできた。

唯一の難点は、放送がすべてネイティブのネイティブのための英語で行なわれていたために、大して英語のできない高校生にとっては、アーティスト名が聞き取れないことがたまにあった、ということだろうか。


1982年のある土曜の夜、理由は忘れたが、ぼくは遅れてこの番組をつけた。すると、ラジカセの小さなスピーカーから、爆音のギター・プレイが流れ出てきた。曲は「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」。

ジミ・ヘンドリックスだ!と思ったぼくは、すぐにラジカセの録音ボタンを押した。そのころ、これはというものに出会ったらすぐに録音できるよう、ぼくはいつでも生カセット・テープをラジカセに入れてあったのだ。

演奏は素晴らしかった、いや、すさまじかった。ぼくは興奮を抑えきれない気持ちでいた。


ところが。

「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」の次には、いきなり聴いたことのない、ノリの大きなブルース・ナンバーが始まった。そして、歌声にもまるで覚えがなかった。

ジミ・ヘンドリックスじゃないのか?

じゃあ、さっきの演奏はなんなんだ?

あんなにジミそっくりに弾ける人間がいるのか?

あんなにすごいギターを弾ける奴がいるのか?

ブルース・ナンバーに耳を傾けながら、ぼくの頭の中は疑問符でいっぱいだった。


その曲を最後にライブは終わったのだが、終わり間際に、「スティーヴィーなんとか!」と叫ぶ声が聞こえた。それがこのアーティストの名前だろうとは思ったが、“なんとか”の部分が、高校生には聞き取れない。

ぼくはその後、そのテープを何度も何度も聴き返し、“なんとか”の部分を聞き取ろうと必死の努力をしたが、無理だった。


レコード店で「ス」の棚を探してみても、当てはまるアーティストのレコードはなかった。音楽雑誌にもそんな人は載っていなかった。インターネットなどない時代だ。それ以上は調べようがなかった。

こうして、ぼくの中には、ジミそっくりの演奏ができる、“スティーヴィーなんとか”という、とてつもない奴がいるんだ、ということだけがインプットされた。

その“なんとか”の部分に入る名前がやっとわかったのは、翌年になってからのことだった。

[続く]

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[スティーヴィー・レイ・ヴォーン - ソニー・ミュージックエンタテインメント]

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【著者プロフィール】

細川 真平(ほそかわ しんぺい)

音楽ライター。ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。『ギター・マガジン』では「ロック・レジェンド紳士録」を連載中。