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ジミ・ヘンドリックスが「ホーンみたいに聴こえる」と気に入ったサウンド

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【第36回】マウンテンの『勝利への登攀』と、レズリー・ウェストのレス・ポールJr.(3)

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マウンテン
『勝利への登攀』(紙ジャケット仕様)(amazonリンク)

ソニー・ミュージックエンタテインメント
SICP-1779/1,890円
2008年6月25日発売(オリジナル1970年作)



レズリー・ウェストがなぜレス・ポールJr.を使うようになったのかは分からない。

パパラルディがウェストに渡した、という説もあるようだが、調べてみても詳しいことはどうも分からないのだ。

あの時代、レス・ポールJr.はけっしてギターの王道ではなかったはずで(今でも同じだろうが)、あえてそれを使ったことの意味を、ぼくは知りたいと思う。いつか、直接ウェストに訊くことができれば、と願う次第だ。


ただ、そんなぼくにも十分過ぎるほどに分かっていることがある。マウンテンでのレス・ポールJr.を使ったウェストのサウンドは最高だった、ということ。そして、その中でも『勝利への登攀』におけるサウンドが最上のものだ、ということ。

艶と粘りの中に芯が通った音、しなやかさと激しさが同居した音、色気と鋭さを両立させた音……どう書いてもぼくの才能では、世界中どこを探しても他にはないあのサウンドを説明することはできなさそうだ。


前作『レズリー・ウェスト/マウンテン』でのサウンドには、まだ模索中の感があった。ウェストの音、というものがまだ定まっていない気配なのだ。

また、次作である『ナンタケット・スレイライド』でのサウンドは本当に素晴らしいものであり、『勝利への登攀』にかなり近いのだが、個人的にはレンジが若干狭い気がする。『勝利への登攀』のような圧倒的な音の広がりに欠ける気がしてしまうのだ(これはあくまでも個人的な感想であり、好みだということをぜひご理解いただきたい)。それ以降もその傾向は同じであるように感じる。

そういう比較のもと、『勝利への登攀』でのサウンドは、もうほとんど奇跡的と言っていいほどに完璧だと、ぼくは思うのだ。


『勝利への登攀』の制作中、たまたま隣のスタジオでジミ・ヘンドリックスがレコーディングをしていた。彼らが誘ってみると、ジミはマウンテンのスタジオに立ち寄った。3曲目の「君がすべて」を聴いたジミは非常に気に入り、「いいリフだね」「ギター・サウンドがホーンみたいに聴こえる」とウェストに言っそうだ。

インタヴューを読むと、ウェストはそのことを今でも大きな喜びと感じているようだが、もっともなことだと思う。そしてまた、ジミがウェストのサウンドを気に入ったのも、もっともなことだとぼくは思う。


ウェストのサウンドの秘密は何か。

ひとつにはレス・ポールJr.そのものにあるはずだ。レス・ポールの簡易版のような作りと、P-90ピックアップの組み合わせからは、レス・ポールほど重厚ではなく、かと言ってストラトほど軽くはないサウンド、逆に言えば、ストラトよりも重厚で、レス・ポールよりもシャープなサウンドが生み出されるだろうことは、想像に難くない。

だがそれだけではない。これはエレキ・ギターの宿命だが、サウンドはギターだけで作られるものではないのだ。

アンプやエフェクターまで含めてのサウンド作りであり、そこまで含めてひとつの楽器だと言ってもいい。

そういう意味で言うならば、ウェストのサウンドにはサン製のアンプが必要だし、ファズフェイス(ファズ)が必要だし、エコープレックス(テープ・エコー)も必要だ(テープ・エコーとしてではなく、ブースター/プリアンプとして)。


そしてもちろんその上に、彼のピッキングがないとあの音にならない。彼の最大の得意技であるピッキング・ハーモニクスが、指でしか出すことのできない音であることは言うまでもなく。

そしてまた、高度なピッキングのテクニックがあったからこそ、ピックアップは1基で十分だったのだろう。ピッキングの強弱や位置や角度によるトーン・コントロールで、彼の場合には事足りたのだ。


素晴らしく美しいものを見たときの喜びを表すのに「眼福」という言葉がある。目が味わう幸せ、目で味わう幸せ、といったところだろうか。

それを真似して言うならば、ぼくにとってウェストのギター・サウンドは、常に「耳福」である。


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『レズリー・ウェスト/マウンテン』(紙ジャケット仕様)(amazonリンク)
SICP-1778/1,890円
2008年6月25日発売(オリジナル1969年作)

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『ナンタケット・スレイライド』(紙ジャケット仕様)(amazonリンク)
SICP-1780/1,890円
2008年6月25日発売(オリジナル1971年作)



[ソニー・ミュージックエンタテインメント - マウンテン 紹介ページ]

[マウンテン/レズリー・ウェスト] 公式サイト(英語)


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【著者プロフィール】

細川 真平(ほそかわ しんぺい)

音楽ライター。ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。『ギター・マガジン』では「ロック・レジェンド紳士録」を連載中。