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ライブレポート/チープ・トリック

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ポップをやる中年バンドは素敵である。枯れることなかれ!

--チープ・トリック--2008年4月24日・日本武道館
『at Budokan』30周年「at武道館AGAIN!」


チープ・トリックといえば武道館、武道館といえばチープ・トリック。70年代の洋楽ロック全盛期を知る人なら、真っ先にピンとくる組み合わせだろう。

1978年4月24日に行なわれた武道館公演は、一枚のライブ・アルバムとなって世界中に発信され、またたく間に嵐を呼んだ。あの興奮が30年の時を経て、帰ってくる。再び武道館に……、というのが今日の主旨である。はやる気持ちを抑えきれずに会場へ足を運んだ。

正直言って大変驚いたが、武道館はほぼ満員だった。アリーナから3階席までのぐるりを見渡せば、人、人、人で埋まっていた。

ステージ上には巨大スクリーンが用意され、なつかしのPVを切れ間なく流している。あの曲、この曲、若々しい彼らの映像に黄色い声援があっちからもこっちからも飛ぶ。この時点で会場のテンションは相当に上がっていた。

そしていよいよ開演。かの歴史的名盤と同じく「ハロー・ゼア」でメンバーが颯爽と登場した。

リック・ニールセンはギブソンのフューチュラを抱えていた。相変わらずユーモラスな身のこなし。サービス精神満点でギターを弾き、客を煽る。ロビン・ザンダーはリッケンバッカーのソリッド・ギターを抱え、トム・ピーターソンはお馴染みの12弦ベースを弾いていた。

あの時のまま、とはさすがに言えないが、相応に円熟したパフォーマンスで喝采を浴びる。「カモン、カモン」、「ビッグ・アイズ」、「カリフォルニア・マン」と立て続けにプレイ。ここまですごいテンションで飛ばしている。

ここでリックがMC。“ブドーカン、ブドーカン”と盛んに連呼する。そして心底うれしそうに“アリガトー”をくり返すのだった。なんだか知らないが感動が胸にこみ上げた。

そしてあの名曲「イフ・ユー・ウォント・マイ・ラヴ」が始まる。初めてチープ・トリックを聴いた時、なんて胸が躍るバンドなんだろうと思った。約30年前の気持ちがそっくりそのままタイムスリップしてやってきたような気がした。甘酸っぱいメロディ、キュートなルックス、タイトな演奏、そしてユーモア。何も変わらなかった。あの時のままのバンドがここにいる。

数曲やって、待ってましたの「甘い罠」。当然ながら『at武道館』と同じMCをロビンが復誦して曲がスタートした。会場は歓喜の渦。サビでは全員がそろってXジャンプ!……ではなく、“クライン、クライン、クライン”をシングアロングして武道館が揺れた。

ここからは代表曲のオンパレード。「ヴォイシズ」や「永遠の愛の炎」は、当時は発表されていなかった曲だが、これを聴かずしては帰れないでしょう。

そして、極め付きは「サレンダー」。これまでギターをとっかえひっかえしていたリックが、ついにアレを出してきた。そう、ヘイマーの5ネック・ギターである。

単純なコードに単純なメロディ、それがなんでこんなにドリーミーなんだろう。ある意味、ギター・ポップの理想のような曲である。盛り上がりが最高潮に達したところで、本編は終了した。

ちなみにリックが使ったギターを列挙しておくと、ヘイマーのエクスプローラ・タイプ、ギブソン・レス・ポール・サンバースト、フライングV(アーム付き)、レス・ポール・ゴールドトップなどなど。目新しいところではサンドヴァルのストリームライナーなるオレンジ色の変形ギターも弾いていた。


鳴りやまぬアンコールにすぐに舞台に上がった4人。「ドリーム・ポリス」がスタートする。素晴らしかった。ポップをやる中年バンドは素敵である。枯れることなかれ、中年になってもポップをやれ。僕はしみじみそう思ったのだった。

演奏の合間にリックは、恒例行事となったピック投げを披露。あっちにもこっちにも投げまくっている。楽しそうだった。

1曲挟んで「今夜は帰さない」。時報の音を模したイントロのハーモニクスが出た途端に体が震えた。あのリフ、あのサビ、あの興奮。これぞチープ・トリックだ。

ラストは「グッドナイト」だった。

あっという間の2時間。個人的にはまだまだ聴きたい曲もあった。「エロ・キディーズ」とか「ホット・ラヴ」とか。しかし、かけがえのないひとときだった。日本のファンは最高のおやすみを贈られ、武道館をあとにしたのだった。

文:野口広之(ギター・マガジン編集長)
写真:Yuki Kuroyanagi


【SETLIST】

1. ハロー・ゼア
2. カモン、カモン
3. ビッグ・アイズ
4. カリフォルニア・マン
5. イフ・ユー・ウォント・マイ・ラヴ
6. ベスト・フレンド 
7. ダウンド 
8. 甘い罠
9. アイ・ノウ・ホワット・アイ・ウォント 
10. ヴォイシズ 
11. ハイ・ローラー
12. 永遠の愛の炎 
13. ザット70'sソング
14. サレンダー

--ENCORE--

15. ドリーム・ポリス 
16. サヨナラ・グッバイ
17. 今夜は帰さない
18. グッドナイト

[ソニー・ミュージックエンタテインメント - チープ・トリック 紹介ページ]