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ライブレポート/X JAPAN 3月29日 ~無謀な夜~

完全復活フル・ステージ! 無謀をやり遂げた驚異の夜

ほぼ定時、5万人を飲み込んだ東京ドームが一瞬にして暗闇に包まれる。その闇に触発されるようにただならぬ歓声があがり、会場中を震え上がらせた。

まるでドーム全体が感電したかのように、ビリビリとした刺激が駆けめぐっていった。そしてそれは、ステージを覆う幕にふたつのシルエットが映し出されることで、早くもピークに達し大スパークを発する。ひとつのシルエットは少しかがみながら、透きとおるような歌声を伸びやかにこだまさせる。もうひとつのシルエットは柔らかくも力強くピアノを叩き、流れるようなメロディを奏でる。

1曲目は「Forever Love」だ。昨日の公演でもそうであったように、10年の時を感じさせない、なにも変わらないTOSHIとYOSHIKIがそこにいる。曲が進み幕が引き下ろされると、彼らと同じく変わらぬたたずまいのPATA、HEATHの姿も現われた。そしてHIDEの姿も。

X JAPAN 攻撃再開 2008
I.V. ~破滅に向かって~
2008年3月29日 at 東京ドーム ~無謀な夜~


セットはそのまま「Rusty Nail」へとなだれ込んでいく。目の前にX JAPANがいるという現実に、感激と放心の視線でステージを追っていたファンだったが、アップテンポに会場を揺らしたこの曲では力のすべてを歓声に変えてステージにぶつけた。

この日の見どころのひとつは、PATAのギター・ソロ・タイムだろう。

近年はRa:INとして太く粘りのあるハードロックを聴かせている彼。「WEEK END」終了後、おもむろにステージ中央に歩み寄り、それまでの耽美な世界観を打ち破るようなドライブ・ギターをかき鳴らす。

55年製レス・ポールを抱え花道をゆっくりと進むその背中は、これまでになく大きく見えた。インプロヴィゼーションで構築されたソロは、チョーキング一発でファンを酔わせ、モヒカン時代を彷彿させるシーケンシャルな速弾きでギター・キッズを圧倒したのだった。

プレイ後、手を振りながら花道を戻るPATAの、あの何とも言えない笑顔がとても印象的だった。


TOSHI、PATAがタカミネのアコースティック・ギターでやさしく聴かせてくれた「Longing」などを経て、スクリーンのHIDEと完全にシンクロした「紅」を最後に本篇は終了した。

ここまでは昨日の展開がウソのように順調に進んでおり、これで終わるとは誰も思っていない。皆、まだまだ叫び足りないといった感じだ。

もちろん、それはバンド側も同じこと。アンコールの1曲目、「VUK」に合わせてファッション・ショーが行なわれるという新しい演出に続いては、YOSHIKI渾身のドラム・ソロ・タイムに突入。

なんと今回は20m上空に昇ったドラム・セットが、50mはあろうかという花道をYOSHIKIを乗せたまま突き進む! 悪魔が乗り移ったかのような乱打、ダブル・ベースを打ちながらのキーボード・プレイ。それらすべてを終えたあと倒れ込むあのパフォーマンスは、YOSHIKIにしかできまい。スゴイのひと言!

YOSHIKIは体を引きずりながらステージに戻ると、最後の力を振り絞るかのようにピアノに向かい、「Tears」を奏でる。すでに登場していたメンバーもその瞬間を噛みしめるかのように熱くも淡々と演奏する。演奏が終わり、ファンへ挨拶をすると彼らはステージを去っていった。

まだ聴きたい。その想いは「ENDLESS RAIN」のコーラスを合唱するという、昔ながらのコールで表明された。実際、出演予定のゲスト・ギタリスト、ウェス・ボーランド(ブラック・ライト・バーンズ/元リンプ・ビズキット)とリチャード・フォータス(ガンズ・アンド・ローゼズ)の出番がまだなので、当然もう一度アンコールがあるものだと考えていた。

しかし、待てど暮らせどメンバーは出てこない。そして何度目かのコーラスを歌い終えるかという時に、ファンとしては最も恐れていたであろう、場内アナウンスによって公演の終了が告げられた。今日もウェスたちに出番はないのか……そう思った次の瞬間、ドームにSE「PROLOGUE(~WORLD ANTHEM)」がこだまし、YOSHIKIを先頭にメンバーが飛び出してきた。

この時のファンの歓喜といったら! SEの間中YOSHIKIはステージを縦横無尽に駆けめぐり、TOSHIはかけ声をあげ会場中をあおる。

YOSHIKIがドラム・セットに戻り頭上でスティックをクロスさせたっ! 「X」だ!! TOSHIのシャウト、そしてハイハットに導かれ、怒濤のアンセムがスタートした。ウェスとリチャードも待ってましたとばかりに馳せ参じ、思いっきりギターを暴れさせる。

リチャードは黒のレス・ポール・カスタムを、ウェスはヤマハのシグネイチャー・モデルでX JAPANのステージに花を添えていく。もしかしたらファンはふたりのことを知らなかったかもしれないが、そんなことを気にして曲を聴いていた人はいないはず。ここぞというタイミングで一体となり飛び上がらなくてはいけないのだから。眼下のオーディエンスが一斉にする“Xジャンプ”を見て、ウェスとリチャードはさぞや驚いたことだろう(笑)。

HIDEの“飛べ飛べ~”を挟み、「X」は大円団を迎えた。次の曲は?……しかし、この日のセットはこれで正真正銘の終了となった。いろんな意味で何とも驚かされる、X JAPANでしかありえない無謀なショーであった。

明日はどのような夜になるのか? わかっているのは、何かが起こり何かが創造されるということだ。その何かとは? それはきっとこれからのX JAPANを見ていけば、自然とわかるはずだろう。

ひとまず、明日の最終日が無事行なわれることを願いながら、僕は東京ドームをあとにした。


文:『ギター・マガジン』編集部・岡見高秀


『ギター・マガジン』2008年5月号の巻頭特集は、「HIDE-その視線の先に」(18ページ)。詳細はリットーミュージックホームページで。

[X JAPAN 公式サイト]