コラム/セミナー > GENTLY WEEPS - ギターとアルバムを巡る物語
リアル・レニーとの遭遇

【第5回】スティーヴィー・レイ・ヴォーンと、レニーと“レニー”と「レニー」(2)
11月半ば、アメリカに住む従姉妹の結婚式があって、ラスベガスへ行った。
着いた日、ホテルにチェックインしてしばらく休んだあと、ギター・センター・ラスベガスへ向かった。特に目当てのものがあったわけではない。ただ行ってみたいと思っただけだった。
ギター・センターは全米に160以上の店舗を持つ、巨大な楽器店チェーンだ。有名なのはLAのハリウッド店で、そこがたしか本店だと思う。ラスベガスに着いてから知ったのだが、ラスベガス店はできたばかりの巨大なショッピング・エリア内に移転しており、その前日に新規オープンを迎えたばかりだった。
想像どおりの巨大な店構えで、これも想像どおり、店内にはそれほど目を引くものもなかった。ただ、奥にあるガラス張りの、6畳ほどの狭い部屋が気になった。だいたいビンテージものなどは、こういうところに置いてある。そこへ吸い寄せられるように入った。
その部屋のまた奥にショー・ウィンドウがあり、何本かのギターが壁にかけられている。その中央に、SRVの“レニー”があった。
ギター・センターがフェンダーと組んで、SRVの“レニー”のレプリカを発売する話は先週書いたとおりだ。だから、「ああ、これか」と思った。ガラスに顔をくっつけるようにして、見た。だが、何かが違う。傷も、汚れも、そして、なんて言うか、そのギターが持っている存在感みたいなものが、レプリカでは不可能なレベルに達している気がしたのだ。
その部屋を出、店員をつかまえて訊いた。「あのショー・ウィンドウの中の“レニー”は、まさかリアル・ワンなのか?」と。気のいい店員は、興奮気味にこう答えてくれた。
「そうだよ、あれは本物の“レニー”だ! この店は昨日、新規オープンしたばかりなんだ。それを記念して、ここに展示されるために、“レニー”は今朝ラスベガスに着いたんだ!」
これが偶然とは、とても思えなかった。ぼくがラスベガスに来る前日がたまたまこの店の新規オープン日で、ぼくがラスベガスに到着した朝、同じようにこのギターもラスベガスへ到着し(どこから来たのかは聞きそびれたが、ハリウッドの本部からだと思う)、ぼくが店へ行ったときにはショー・ウィンドウに飾られ、ぼくを待ち構えていた。SRVがぼくに本物の“レニー”を見せてくれようとしたとしか思えなかった。
SRVが「レニー」を、そして『イン・ステップ』に収められた、同じようにあまりにも美しいインスト・ナンバー、「リヴィエラ・パラダイス」を演奏した本物の“レニー”が、ぼくの目の前にある。
深い感動と、感謝の気持ちに、ぼくは満たされた。最後には、ぼくは無意識のうちに、手を合わせて“レニー”を拝んでいた。
▲筆者が撮影した本物の“レニー”
[ギター・センター](英語)
<前回 | GENTLY WEEPS~ギターとアルバムを巡る物語 | 次回>
【著者プロフィール】
細川 真平(ほそかわ しんぺい)
音楽ライター。ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。『ギター・マガジン』誌では「ロック・レジェンド紳士録」を連載中。
【関連記事】
[Fender/スティーヴィー・レイ・ヴォーン“レニー”トリビュート・ストラトキャスター](2008年1月15日)
[出会いは爆音の「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」](2008年7月24日)
[「レッツ・ダンス」でのアルバート・キングのようなブルースギター](2008年7月31日)
[雑誌で見た、塗装のはげたストラトの音](2008年8月7日)
[“ナンバー・ワン”には、SRVの魂が宿っている](2008年8月14日)
- [2007年12月07日 17:43]








