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テクニカルなプレイとは違う、イングヴェイならではの音楽表現術

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【第7回】これを聴くとためになる! お薦めDVD(1)

前回~前々回と、「これを“聴くと”ためになる」という視点でCDを紹介しましたが、今回は「これを“観ると”ためになる」という視点で映像作品を紹介します。

僕がアマチュアの頃は映像から音楽や演奏を学ぶのは難しかったのですが、今はDVDで気になるところを何度も観ることが簡単にできるので、フィーリングや技術を学ぶことも容易でしょう。

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『Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor LIVE with the Yngwie Johann Malmsteen』
イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン、新日本フィルハーモニー交響楽団


今回は、テクニカルなプレイとは違う“イングヴェイならではの音楽表現術”について解説していきます。

『Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor LIVE with the Yngwie Johann Malmsteen』は、イングヴェイ・マルムスティーンと新日本フィルハーモニー交響楽団が共演したコンサートを収録したクラシックDVDです。

イングヴェイのクラシック的なフレージングや、速弾きテクニックについてはすでに全世界で認知されているので、ここではそれ以外のイングヴェイの魅力に迫ってみたいと思います。

ポイント1 熱の入った演奏でも、両手は脱力している

イングヴェイのエネルギッシュな演奏は有名ですよね。ロック・バンド形態でライブを行なう時は、ギター回しや、歯で弾いたり、ギターを宙に放り投げたりのパフォーマンスはもちろん、感情むき出しでギター・ソロを弾くその演奏スタイルは、多くのオーディエンスに愛されています。

しかし、皆さんがギタリスト(ギターではなく、他の楽器であったとしても)として自分のソロを弾くことをイメージしてください。あれだけ熱く弾こうとしたら両手や体全体に力が入ってしまうと思いませんか? DVDの「Trilogy Suite」のイントロはかなり緊張感があります。渋谷のオーチャード・ホールは満席、バックには130名のオーケストラ、お客さんはクラシックの流儀に従って静かに聴いているという状況です。どう考えても緊張しますよね(DVDの解説で、イングヴェイ本人も緊張したと述べています)。

イントロのフリー・ソロからいきなりエネルギー全開の速弾きをしているのですが、両手の力が抜けまくっている…… これは考えられないほど凄いことなのです! 天性の肉体的才能としか思えないほどの脱力をしています。それから、全世界のホール・ツアーでこのソロを弾き続けてきた熟練の技術も観ることができます。ぜひ映像で確認してください。

ポイント2 リズム感とタイム感について

「Icarus Dream Fanfare」にはドラムが入っていません。指揮者に合わせて弾かなければいけない状況で、速弾きを盛り込みつつ、ビブラートをしながら、キメ・フレーズの箇所はオーケストラとぴったり合わせる。こういうことはメトロノームに合わせて正確に弾く……という感覚だけではできません。

例えるならば、メトロノームに合わせて正確に弾くことが“リズム感”で、イングヴェイのそれは“タイム感”と言えるでしょう。イングヴェイの速弾きは拍にぴったりはまった演奏はあまりないですよね。もっと横に流れていくような演奏です(小節線を越えていくような演奏と言えばいいでしょうか…)。しかし、「ここで収まりをつけたい!」というところでピタッと決まる感じですよね。

ちなみに、一流のアナウンサーもこれと同じような技術があります。たとえばニュース番組やラジオ番組で“ぴったり1分間のトーク”があったとして、57秒経過したところで“それでは皆さんさようなら!”と言わなければならないのに、“それでは皆…”で番組が終わってしまったらアナウンサーとして重大な過失ですよね(笑)。ちょっと話がそれましたが、イングヴェイのタイム感は超一流だと思います。

ポイント3 ストラトキャスターを完璧に知りつくしている

音楽は、始めと終わりの印象が特に重要だと僕は考えています。特に終わりの音がきちっと締まらないと聴いていて「アレレ??」という感じになってしまいます。本作のDVDはオーケストラ作品なので、曲の最後は壮大に盛り上がってビシッと終わる曲が多いでのすが、その時にノイズなどをうっかり出そうものなら、とんでもない失態になってしまいます。

イングヴェイの右手小指は常にギター本体のボリューム付近に位置していて、弾き終わった直後に素早くボリュームをゼロにして、一切ノイズを出していません。こういうことが実は非常に重要です。「Fugue」のエンディングや、「Andante」のソロ終わりでは、1弦21フレット1音半チョーキング→ノイズを出さずにチョーキング・ビブラート→ビブラート直後にボリュームをゼロにしてノイズを一切残さない!……これはフェンダーのストラトの構造(21フレット、ボリュームがブリッジの近くにある、etc.)を完璧に知りつくしているイングヴェイならではの“プロの技”です。


以上、イングヴェイのあまり語られることのない部分を解説しましたが、いかがでしたか? イングヴェイというと、スウィープ奏法とかハーモニック・マイナー・スケールなどがよく解説されますが、彼のギタリストとしての凄さはここで解説したところにもあるのです。それが今回のコラムで伝えられればと思います。

次回は、脱力について僕が普段自分の練習に取り入れていることを、少し掘り下げて解説する予定です。

『Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor LIVE with the Yngwie Johann Malmsteen』(amazonリンク)
イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン、新日本フィルハーモニー交響楽団
ポニーキャニオン
PCBP-50498
87分/カラー
5,040円
2002年1月17日発売

【収録曲】
1. Black Star Overture (Orchestra Only)
2. Trilogy Suite Op. 5, The First Movement
3. Brothers
4. Icarus Dream Fanfare
5. Cavallino Rampante
6. Fugue
7. Prelude to April
8. Toccata
9. Andante
10. Sarabande
11 .Allegro
12. Adagio
13. Vivace
14. Presto Vivace
15. Finale
16. Blitzkrieg (Encore)
17. Far Beyond The Sun (Encore)
18. Evil Eye (Special Feature)
19. Behind The Scenes

※全曲:Composed by:Yngwie Johann Malmsteen

[イングヴェイ・マルムスティーン 公式サイト](英語)

[イングヴェイ・マルムスティーン 公認ファンサイト]

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【加茂フミヨシ・プロフィール】

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超絶技巧を変幻自在に使いこなすギタリスト。スタジオワーク&セッション活動を経て、2005年に1stアルバム『GOOD WAVE』でソロ・デビュー。2006年にFender USAの全面バックアップを受け、2ndアルバム『ノスタルジア』を発表。HMV ジャズ/フュージョン・チャート3位にランクインする。また、COMRADE Recordsのレーベル・マスターやラジオ・パーソナリティーなど、ギタリストの枠にとらわれない多彩な活動を行なっている。


【加茂フミヨシ・DVD/著書】

書籍『ひたすら弾くだけ! ギター・トレーニング』
書籍『ひたすら弾くだけ! アコギ・トレーニング』
書籍『速弾きがうまくなる理由 ヘタな理由』
DVD『DVD版:速弾きがうまくなる理由 ヘタな理由』

【加茂フミヨシ・オンライン動画】

『DVD版:速弾きがうまくなる理由 ヘタな理由』よりデモ演奏「幻想即興曲」と教則シーンのサンプル


[加茂フミヨシ オフィシャルサイト]