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妻の名が付けられたギター

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【第4回】スティーヴィー・レイ・ヴォーンと、レニーと“レニー”と「レニー」(1)

『テキサス・フラッド~ブルースの洪水』(amazonリンク)
スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル

ソニー・ミュージックエンタテインメント

スティーヴィー・レイ・ヴォーン(以下SRV)のギターといえば、真っ先に思い浮かぶのが“ナンバー・ワン”、“ファースト・ワイフ”と呼ばれた、あの塗装の剥げた63年製ストラトキャスターだろう。

だが今回は“レニー”を取り上げたい。デビュー・アルバム『テキサス・フラッド~ブルースの洪水』に収録された美しいインスト・ナンバー「レニー」をプレイした、65年製ストラトキャスターだ。レニーというのは、当時の彼の奥さんの名前から取られている。

このギターの特徴は、茶色のサテン・フィニッシュ(リフィニッシュで、元はサンバーストだったようだ)のボディ色と、ブリッジ下のあたりに入れられたインレイだ。このインレイは、マンドリンのピックガードを模したものである。

SRVは1980年に、オースティンのポーンョップ(質屋)でこのストラトを見つけ、非常に気に入った。しかし、そのとき彼にはこれを買うお金がなかった(彼がデビューしてミュージック・シーンに旋風を巻き起こすのは、それから3年後のことだ)。彼の妻レニーと7人の友人たちは、お金を出し合ってこのギターを買い、80年10月3日の誕生日に彼にこのギターをプレゼントした。ちなみに、価格は350ドルだった。

ある夜、レニーが寝たあと、SRVはこのギターで曲を作った。朝になってレニーのベッドに座った彼は、レニーに「これを聴いて」と言い、曲を奏でた。その美しさに、レニーはただ感動するほかなかった。
「なんて曲か分かる?」
「なんて曲?」
「もちろん、『レニー』だよ」

レニーに捧げられ、“レニー”で演奏される「レニー」は、こうして生まれた。83年のデビュー・アルバムのラストにこの曲は収録され、ライヴでも重要なレパートリーとなった。85年の初めての(そして最後の)来日公演でも、この曲が演奏されたことを覚えている方がいらっしゃるかもしれない(ぼくもそのひとりだ)。

このギターには、もともとはローズ指板のネックがついていた。しかし入手してすぐの時期に、ZZトップのギタリスト、ビリー・ギボンズから贈られたメイプル・ワンピース・ネックに付け替えている。ナンバー・ワンを例に出すまでもなく、SRVがローズ指板を嫌いだったはずはないので、これはきっとネックの太さが問題だったのだろう。65年からストラトのネックは細くなる(薄くなるといったほうが正しいか)。太いネックが好みのSRVにとって、ギボンズからもらったネックがたまたまちょうどいい太さだったので、そちらに替えたということではないだろうか。

ところでこのネック、ヘッドにフェンダーのデカールが貼られてはいるが、フェンダー製ではない。フェンダー製でないことはこれまでにわかっていたのだが、どこのメーカーのものかは不明だった。実はそれが今回、シャーベル製だということが明らかになった。

レニーは2004年に、エリック・クラプトンが主催する“クロスロード・ギター・オークション”に、兄ジミー・ヴォーンによって出品された。そこで、クラプトンのブラッキーに次ぐ高価格、62万3,500ドルで落札された。350ドルで売られていたギターに6,500万円以上の値が付いたのだ。350ドルですら、SRVは払えなかったというのに……。

落札したのは、アメリカの最大手楽器チェーン店、ギター・センター。このギター・センターがフェンダーと組み、カスタム・ショップ製のレニーのレプリカを、トリビュート・シリーズのひとつとして、今年の12月に発売する。

製作指揮を取ったのは、フェンダー・カスタム・ショップのマイク・エルドレッド氏。彼は本物のレニーを分解し、ネックがシャーベル製であることを発見し、驚いたという。なぜなら、彼は80年当時シャーベルで働いていて、なんとそれは彼らがビリー・ギボンズのために作ったネックのひとつだったからだ。彼らはネックのジョイント部に、ギボンズからのオーダーだと分かるように、彼の名前を鉛筆で書いておいたそうだが、それがこのネックには残っていたという。

自分が製作に携わったネックがレニーに使われていたことを知ったエルドレッド氏の驚きもさぞかしだっただろうと思うが、次回はレニーに関するぼくの個人的な驚きの体験を書きたい。

[続く]


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【著者プロフィール】

細川 真平(ほそかわ しんぺい)

音楽ライター。ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。『ギター・マガジン』誌では「ロック・レジェンド紳士録」を連載中。